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承ジョセクリスマスSS「mistletoe」

2013/12/25

欧州の香りが色濃く残るこの地にて迎えるその特別な期間は、さすがに普段あまり信心について思いを馳せないわしの心をもざわついた。
元々持っている、お祭り騒ぎ好きの血が多分に作用しているせいなのかもしれないが。
見回せば自分の居住地ほど華美ではないが、しっかりとその存在を主張する光のイルミネーション。
聖書の一端を表す美しい人形達。
店々は、早々に戸締りをされており、この時間は人の通りもまばらである。
そう、この町のみならず、多くの欧米諸国では、この時期は恋人と過ごすというよりも家族で過ごす色合いが強い。
父親はプレゼントを用意して家にまっすぐ向い、早々に帰宅した子供達は母親の作るケーキの手伝いをし、ツリーの下でそれを待つ。
そして東洋の文化と異なり、クリスマスを終えても、年を明けるまで家族と共にこの雰囲気は続いていくのだ。
家々の窓から漏れ出る光は、見ずとも、その光景を十分伝えてくる。
マフラーを結び直しながら、「まるでマッチ売りの少女だな」と一瞬、考えた自分に対し、小馬鹿にした笑みが浮かぶ。
「ついにボケたか」と。
冷ややかな低音で告げる、何だか懐かしくさえある声が聞こえた気がした。






世間一般でいうこの特別な時期に緊急の仕事を入れたのはわし自身だ。
最終決定権を持つ自分が進めた方が効率がよかったし、どうしても時期を逃せない事柄だった。
それに部下に対し、“この日”に仕事を頼める厚顔さはさすがに持ち合わせていなかった。
 
 
 



耳元を掠めた風に誘われるようにふと見上げれば、そこには人々を祝福するような満点の空。
ビル群など存在しないこの場所の空は、どこか近く、そして一層の煌きを放つ。

遥か離れた距離に隔たれているとはいえ、同じ空の下にいるのだ。
見ている星々は同じだろうか。

幾千回と使い回されたそんなフレーズが、思わず頭に浮かんでしまう。
ああ、まずい。
さっきのことといい、今日の自分の思考はどうかしている。
今浮かんでくるのは、毎年の、そして今年も行われているであろう我が家のにぎやかなクリスマスパーティーではなく。
よりによって、あの声と瞳とは。

こんな日は、貰い物の一級酒でも一杯あおって、早々に寝るに限る。
明日には肝心の商談も控えている。
一晩たてば、こんな気持ちも掻き消えているだろう。
そう。
こんな気持ちなど。

認める訳にはいかないのだから。
 
 
 



ドアに手をかけると、金属のひやりとした感触が手袋ごしにも伝わってくる。
明ければそこには、真っ暗な空間が広がるはずだ。
そう、はずだったのだ。

「…遅えよ。」

だから、その言葉が降ってきた瞬間、わしはその事実を暫しの間、受け入れることができなかった。
随分と無様な呆け顔を十分曝した後。
冷え切った体に血が巡るのを感じたのは、驚きか。
はたしてそれ以外の感情故なのか。

「な・・・なんでおまえがここにいる!」
その解の前に、ようやく当然の問いが口を衝いて出ていた。
「別に…ちょっと寄っただけだ。まあ、明日の朝にはあっちにとんぼ返りだがな。」

寄っただけ、と。
さらっと言ってのけた相手、承太郎は全く意に介していないようだが、ことはそう単純なものではない。ここまでたどり着く為に割いた時間と距離。この時期の急な飛行機のチケット手配等の手間。
ハードルは目に見えて高いのだ。

「いやいやいや、おかしいじゃろ。今日は日本にいる筈だったのに…ちゃんと説明…」
「あれだけ騒ぐのが好きなくせに、よくもまあ仕事なんていれたもんだな。ある意味、鬼の霍乱か…
「は…?鬼…え?」
混乱状態に追い打ちをかける様に、さらに意味の解らないフレーズを最後に呟かれ、ますます
気勢を削がれ、脳内は疑問符に埋め尽くされる。
不本意じゃ。非常に不本意じゃ。
その渦巻くものをぶつけようと、きつい視線でしっかし正対しようと顔を上げると。
いつの間にか、相手の口元には、ひどく緩やかな笑みがたたえられていた。
「まあ、いいからとっとと入れ。」
その稀有な表情を見た瞬間に、跳ね上がる鼓動と、前後の事情等どうでもよくなる現金な自分を認めざるを得ない。
それを振り切り、隠すように、わしの借りてるホテルなのにと、意味のない毒づきをしながら、その横を通りぬけようとすれば、瞬時にその肩に重みがかかる。
「何じゃ。入れと言ったのは…」
「その前にだ…ほらよ。」
振り向きざまに、何かが小さな放物線を描いて自分に向かって投げられる。
反射的にすくいあげる形になった両手に、それは見事に収まった。
「ナイスキャッチ」
「…これは?」
「そこのクリスマス市場で買ってきた。」
目で促されるままに、小さな箱を開けてみれば、表れたのはヤドリギの下に据えられた鳩の飾りだった。
この形状を考えるに…
「ん?これは何かと組み合わされるようになっているのか?」
「ああ。もう一匹のこいつとな。」
そこには、自分の持っている鳩とは正反対の方向を向いた同型の飾りがその右手に握られていた。
「お守りの意味があるんだとよ。」
「あのなあ・・・・・・」
わしだってその言い伝えは思い出し…もとい、聞いた事がある。
ただし。
それはただのお守りでなく。

分け合った二人が末永く幸せでいられますという様に、というものだ。

それを解っているのか、いないのか。
また感情の読めない表情に戻って、ぶっきらぼうに差し出された逆の手に、自分の言葉は続けずに指を伸ばすのと、苦笑いを返すのとはほぼ同時だった。
 
やはりわしも、大概どうかしているな。

口には出さなかった言い伝えと感情を胸に秘める中。






刻限を知らせる教会の鐘が荘厳な音色をたたえ、響き渡り始めていた。







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久々過ぎて、色々思う所はありますが、やっぱりこの日は外せない!
去年はクリスマス関連は花ジョセだったので、今年は承ジョセ!
何はともあれ、メリークリスマス☆
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