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花ジョセハロウィンSS『Trick or…Treat???』

2013/10/31

「はああああ。疲れた…」

この国には「持つべきものは奉仕を」の精神が浸透している。
俗に言うノブレス・オブリージュ。
平時は学術施設や福祉施設への定期的な寄付として。
そしてこのシーズンになれば、関わりのある場所に対し、大仰なまでのハロウィンの飾りつけや演出を行うのも恒例になりつつあった。
ただ…確かに自分もハロウィンのこのお祭り騒ぎは大好きではあるのだが、さすがにあちこちに顔を出し、軽く演説し、15分も休憩のないスケジュールを送れば、こうなるのも必然だったのだ。

体の疲労度に比例する様に、深く沈み込むお気に入りのソファに体を預けていると、そのやや斜めに置かれたガラステーブルがことりと音を立てる。
無意識に視線だけを向けると、その音の主であるシンプルな白の金縁カップには、きれいなきれいな飴色の紅茶が注がれていた。

「本当に今日はお疲れ様でした。気休め程度にしかなりませんが、どうぞ。」
その声に今度は顔ごとあげれば、心からの労わりを込めた笑顔とかち合うことになる。

自分だって、準備に追われて、昨日はほとんど寝ておらんくせに。
そして、今日はそのおかげで、どれだけスムーズに事が運んだか。
その努力も、苦労も表面上は全くおくびにも出さず、そうやってわしの心配ばかりするんじゃな。
本当にお前さんは…

そんな言葉を飲み込んで、感謝の言葉を告げようとした瞬間。
ふと同じテーブルの上に置かれた、かぼちゃマークをあしらったガラス箱に入ったキャンディが視界に入った。
つい先ほどまでいやという程見ていたその柄であったが、わしの頭脳は疲弊しながらもすぐさま、一つの結論を導き出す。

“どうせなら今日にふさわしいお礼を渡そうじゃないか。”

先ほどまでのくすぐったい気持はどこへ行ったのか。
その内情が完全に表に出てしまった、品が良いとはおよそ言えない深い笑いを口元にたたえながら手招きすれば、自然と穏やだったその表情に、一点の訝しさが浮かぶ。
「え…っと、ジョースターさん?」
まあその気持ちは解る…が!即断即決がわしのポリシーなんでな。すまん!

全く心の台詞と行動があっていない速さでもって、右手にはそのキャンディを握りつつ、スーツの袖口を左手でつかまえ一気に引き寄せた。
そのまま口元にキャンディを放り込むや否や、瞬時にお互いの距離がゼロになる。
静寂の支配する部屋に、僅かな水音がやけに大きく響いていた。






「…っと」
そんな、時の間隔を忘れた様な空間の中で、十分に堪能したとばかりに、先に距離を取ったのは、仕掛けたのと同様、わしの方だった。
「今日はいたずらしてもいい日だからな!」
そのまま上げかけた腰を下げ、口元にまで甘味が残っているかの様に、ぺろっと舌を出して、いたずら成功!を体現してみれば。

「僕から何も言ってないですし、トリックをもらったのか、トリートをもらったのかこれじゃ解りませんよ…」

見る見る色の変わっていく、口内の物により少し膨らんだ頬のその熱上昇を抑えんがばかりに、片手で顔を隠しながら、この初心な青年は完全に俯いてしまった。
まあ、座っているわしからは全て見えとるんじゃけどね。
いやー、若いっていいのう。この反応を見てるだけでも楽しくてたまらない。
そんなウキウキ感に重なる様に、古びた振り子時計が低音でリズミカルに時刻を告げる。
お、もうこんな時間か。そろそろ他の連中を…
と、今度は完全に立ち上がろうとした時である。
時計にやっていた目線を戻すと、何故か自分の眼前には影ができていた。
いや、影と言うかその体そのものが。

「ジョースターさん!」
「は、はい!?」
そして突如降ってきた大音声に、思わずそんな間抜けな返しが出てしまった事に、羞恥が駆け上るより先に。
「貴方がその気なら…僕、頑張りますから!」
顔を染める色は変わらないながらも、その瞳だけはさっきの狼狽え具合から一転していて。


『ジゴウジトク』

瞬間、何故か片言の日本のことわざが頭をよぎる。
しかし、そんな事はお構いなく。
目の前の人物と共謀して、抵抗を抑えようとでも言うように、そのやわらかさを誇るソファがさらにわしの体を包み込んでいくのを感じながら。

背筋がひんやりするのは革の感触なのか、別のものなのかを判断するその猶予は、どうも与えられそうになかったのだった。







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当サイト恒例の社長と秘書な花ジョセ!
じじいがハッピーになれたかどうかは別のお話?
とにかくハッピーハロウィン!
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