スポンサーサイト

--/--/--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ジョセフ誕生日SS「Wishing you…」

2013/09/27

「あれ?今日は社長は早めのランチに行かないのか?」
「…カレンダーを見てみろよ。今日は何日だ。」
「26日だろ?明日はもちろん予定ぎっしりだが、今日は特に…あ。」
「そうだよ。26日の昼間なのは、あくまで”ここ”の時間だからな。」
「成程。俺は去年知ったが、ここの風物詩だという話だったか。」
社長室の前の廊下で、そんな会話がされている正にその時。


執務机の左側に配置された、その部屋の風格に合う年代モノの電話を前にして。
ジョセフ・ジョースターは、ただひたすらその黒い物体を見つめ続けていた。
机上には、これまた古めかしい置時計があるものの、それを軽く横目にしつつ、愛用の腕時計に鋭い視線を落とす。
盤面に表示される日付欄は26。そして針が指すのは、午前10時59分。
微細な筈のその刻音が、今だけはやたら大きく聞こえていた。
そしてついに秒針が11の数字を横切る。
3・2・1…
ジリリリリ


耳にその音が飛び込んだのとほぼ同時に、見事な反射神経で勢いよく掬われた受話器は、若干のカツンという抵抗音を表しながらも、左手の中に納まった。
「…よお、じじい。」
そして、耳元に迎えたそれが、最初に伝えた第一声は、あの国特有の「もしもし」でも、こちらの挨拶「Hello」でもなく。
その年齢にしては、やたらドスの聞いた、だがとても心地よい低音のその一言だった。
「ふふふふふふ。」
「…おい、いきなり何だそれは。気持ち悪い。やめろ。」
「だってな…何回経験しても”これ”は嬉しくてのう。あ、どうせならこんな日に位、おじいちゃんって呼んでくれても罰は…」
しゃべっている最中にも零れる、止められない喜びの笑い声は、一向に止まる気配がない。
しかし、そんな事は本人にとってみては、些細な事であり、お構いなしの事だ。
「………」
だが、そんな浮かれ気分も、少し長く続いたその沈黙に、さすがに我に返るハメになる。
「うわー!待った!すまん!調子にのった!黙らんでくれえ!」
本題の前に切られてしまっては叶わんとばかりに、必死にそう言い募れば。
「…アンタって奴は…まあいい。」
そう一旦、僅かな吐息が聞こえた後。
「…Happy Birth Day」
ネイティブの発音と何ら変わらない流暢な美しい祝いの言葉が、ジョセフの耳にストンと入り込む。
それは瞬時にして体の隅々まで行きわたり、じんわりと温もりを与えていく。
「ありがとう、承太郎…」
そのまま電話コードの伸び限界まで、背面の窓に向けて振り返った彼が見ていたのは、眼下の緑溢れる公園ではなく。
遥か彼方の東を指していた。

◇◆◇

そして、その彼方の国で同時刻、空条承太郎は思い出す。
あれは小学校にすらあがっていない、留守番中の夏の終わりの朝の事。
「Grandpa!Happy Birth Day!」
「え?」
受話器越しに聞こえた祖父の声は、多分に驚きを含んでいた。
事前に何も言わず、確かにびっくりさせたかった訳だが、それは自分の思っていた驚きとは違う気がする。
僕何かしちゃったのかな。
幼いその心に訪れた不安から、思わず口をつぐんで受話器を両手で持っていると、
すぐに祖父から、慌てた、でも優しい声音が返される。
「あ!すまん、承太郎。そうじゃった。時差があるんじゃったな。」
その祖父の反応に安堵しつつも、そういえば、母から“時差”というその単語を聞いた事があった事を、今ここで彼はようやく思い出した。
「ありがとう、承太郎。わしはとても嬉しいよ。そしておまえがお祝いの一番乗りじゃな。」
そして、その、いつものウィンク付きで言っている姿がありありと解るご機嫌ぶりで告げた祖父の言葉は。
ひどく彼の耳に残り続けた。

◇◆◇

一番乗り。
そう、何事も“一番”が大切なのだ。
現在に至るまで、アンタへのバースデーコールは俺が一番であり。

今この時は、俺だけのものだ。


急に騒がしさが消えた電話口に気を取られた後、自覚すると、承太郎の口元は、そんな独占欲に僅かに歪んでいた。
電話というものが、顔が見えないものでよかったと、こういう時、彼は心底、思う。
しかし、そんな独占欲と対をなすような、でも確かに存在する心を満たす、ひたすら穏やかな気持ちがあるのも眼前たる事実で。


おそらく、このすぐ後耳元で、再び歓喜の喧騒が繰り広げられる事も予想しながら。
特別な日だから、相手の願いを叶えてやるんだ、と自分に言い聞かせ、
”その気持ち”を伝える為に、承太郎は再び、その唇を開いた。

「Wishing you happiness in life…Grandpa」





*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*
またしても滑り込みセーフだけど、ジョセフ誕で承ジョセSS!
前から書きたかった遠距離時差話をようやく載せられたけど、
ちょっと突貫すぎて色々お恥ずかしい…!うう。
でも、何はともあれジョセフ!お誕生日おめでとう!
*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*

スポンサーサイト

Comment

管理者にだけ見せる
Copyright (c) Stellae All Rights Reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。