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花ジョセSS「Singin' in the Rain」

2013/07/29

NYは他国の都市と比較しても、そこまで降雨量が多いわけではない。
日本でいう『梅雨前線』は緯度の関係上、ここまでは上がってこないという事もある。
それでもまあ、もちろん雨季を感じる程、連続で降る日もある。
それがこうも続くと梅雨を知っている僕でもさすがに気が滅入ってくるというものだ。

「また天気予報を外しおって。」

そう目の前で口を尖らせるジョースターさんの意見には頷かざるを得ない。

「何が”今日は久々に晴れ間が続くでしょう”じゃ。全く…新聞を代えてやろうかの。」

とりあえず帰社したら、他の定期購読候補リストでも挙げておこうかな、と苦笑いを浮かべるしかなかった。






外部との打ち合わせの帰りに寄ったリトルイタリーのリストランテで遅めのランチを取っていた時、最後のコーヒーを啜る音と同時にぽつぽつという雨音が聞こえ始めた。
そして最初はそんなたわいのない音が、カップの底が見える頃には、かなり大きめのそれに変化していったのだ。
ランチタイムぎりぎりの為、唯一の客だった僕達に、外の様子を見兼ねて店員が1本しかありませんが、とネイビーの古びた長傘を差し出してくれる。
タクシーを呼ぼうかとも思ったが、地下鉄の駅までそこまで離れていない上、そんな店員の厚意も無下にはできず、僕たちはそのまま歩いて外に向かう事にした。
しかし、その最中にもますます強まる雨脚に比例して、降下していくジョースターさんのテンションをひしひしと感じる。
ああ、さっきの会合相手の横柄な態度も尾を引いてるんだろうな…
そんな雰囲気を変えようと、傘の柄を握りなおして別の話題を投げかけようとした、その時だった。

「そうじゃ!」

名案を思いついたという声と共に手を打つと、ジョースターさんは鞄の内ポケットから、愛用のウォークマンを取り出す。

「これぞまさに”雨に唄えば”作戦じゃな。ほれ、花京院。」
「え?僕もですか?」

そのまま両耳に宛がわれると思っていたイヤホンの片方が自分に向けられている。

「いいから、いいから。本当に気分が上がるもんじゃぞ?」

そう楽しげに言われてしまえば、僕に断る理由などありはしない。
そして。
では…と耳に装着したその瞬間、それは起きた。

「お!気付かんですまんな花京院。お前さんの方が濡れとるじゃないか。ほれ、もっとこっちに寄りなさい。」

そういってジョースターさんはニコリと笑い。
握っている僕の手に重ねる様に柄を掴みながら、僕の肩を抱き寄せたのだ。






あまりの事態とその唐突さに、僕の思考は一瞬、完全に停止する。
もはや耳に入ってくる音楽が何なのかも判別できない。
…近い。近すぎる。
物理的にもそうだが、これは完全に精神的パーソナルスペースを超えている。
だがそれ以上に。
自分が今、”誰”とそうなっているのか。
否が応でも体の様々なシグナルがそれを教えてくる。

「お、おい!花京院!顔が赤いぞ?風邪でも引いてしまったか?」

そう心配そうに傘を傾け覗き込まれて、僕は今いつも通り、笑えているだろうか。
それでも精一杯の「何でもないです」を繰り返しながら。






僕が願ったのはただ一つ。
今ジョースターさんの左耳に流れる音楽と、このうっとおしかった筈の雨音が、
このうるさく脈打つ拍動を、かき消してくれる事だけだった。






*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*―――――*★*
この間のお題SSと同じく社長と秘書設定。
梅雨明けが思いのほか早かったのでちょっとシーズンを逸しましたが(^^;
雨の日ネタの王道を詰め込んだらどうなるか花ジョセでお試ししたら…
やっぱり一向に進展しない二人になちゃいました。典明君ごめんね!
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