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承&ジョセSS「星祭の日」

2013/07/07

先ほどまでお母さんとおじいちゃんと一緒に、折り紙で星型や提灯型の飾りを作っていた同じ卓で、僕は今、覚えたての漢字を使いながら必死に自分の願いを込めた短冊を作っている。
用意した紙はピンクと水色の2枚。
一つには、“僕の周りの人達が幸せであります様に”
そしてもう一つは…
“おじいちゃんと…”
「承太郎ー!そろそろ飾り付けを始めるぞー!」
そのタイミングでの当の相手からの大きな呼びかけに心臓が跳ね上がる。
一瞬文字が揺れそうになったけど、何とか止まり、そのドキドキを抑えるために一度深呼吸をして、「はーい!」と大きな声で返し、急いで短冊を仕上げると、僕は縁側に向かって駆け出した。






「どーじゃ!立派な笹じゃろ!」
おじいちゃんが業者に持ってこさせ立てかけた笹は、その言葉通り、友達の家や学校に置かれているどの笹よりも大きくて立派だった。
「うん!ありがとう、おじいちゃん!」
そう答えれば満面の笑みを浮かべてくれるおじいちゃんを見上げていると、お母さんがそっと屈んで、
「最初はおじいちゃんったら、『竹』を丸ごと買ってきて庭に植えようとしてたのよ」
と笑いながら耳打ちしてくれた。
「こら!ホリィ!」
「きゃー!ごめんなさいパパ!」
そのまま、竹と笹の違いなんかわしには解らんわい、とふてくされるおじいちゃんの口を尖らせた姿を見て、僕とおかあさんは顔を見合わせてふふっと笑った。






「よーし!わしのは結んだぞ。」
その長身を活かし、笹の頂点付近に結んだおじいちゃんが高らかに宣言する。
「ほれ、承太郎。どうせなら少しでも天に近い方がいいだろう。おじいちゃんが結んでやるから。」
そう言われて、僕は咄嗟に短冊を後ろ手に隠してしまう。
「え!い、いいよ…大丈夫だから。」
おじいちゃんはただ厚意で言ってくれているのに、それを拒むのはとても申し訳ない気持ちになるけど、どうしてもこれはおじいちゃんには見てもらいたくないのだ。
だって…

「パパ。日本の人はとっても奥ゆかしいのよ。願い事は心に秘める事が多いの。ねえ、承太郎?」
願いの内容を知ってか知らずか、お母さんが助け舟を出してくれてほっとする。
「そういうもんかの?相変わらず東洋の考えはいまいちわからん。」というおじいちゃんの呟きを耳にしながら、僕は急いで自分の手の届く高さで、笹の奥の方に短冊の紐を結び付ける。
どうか。どうか僕の願いが叶います様に。
そんな作法はないのかもしれないが、自然と手を合わせて目をつぶった僕の頭に、何かがぽふっと置かれる。
「叶うといいな、承太郎の願い。」
「…うん。」
その言葉に、嬉しさを込めて僕はゆっくり、でも大きく頷いた。





縁側で一緒に食べたスイカを片づけにお母さんが席を立ってから暫くして。
隣から「それにしてものう…」というおじいちゃんの声が聞こえてきて、足をぶらつかせながら、緩やかに横を向く。
「ん?何?」
「いや、一応七夕の勉強をしてきたんじゃがの…はっきり言ってちょっと自業自得と思う所もない訳ではないが、それでも好きな人間に一年に一回しか会えないのは不憫だのう。」
「…うん、そうだね。」
授業で習ったそのストーリーを僕も思い出し、そのまま満天の星空を眺める。
「今年はこんな晴天だし、ちゃんと会えるといいのう。」
その言葉に、またしても同意をしようと再度おじいちゃんの方を向いた時だった。
さっきまでの僕と同じように星空をただ見つめるおじいちゃんの瞳は。
何故だろう。
こんな事を言うのはおかしいのかもしれないけど。
完全に『僕の知らない人』のものになっていた。
それに対し、ふわふわとした、掴みどころのない気持ちを持った僕の唇は、その内容を判断する前に、思わずこう投げかけてしまっていた。
「おじいちゃんも…普段は会えない、会いたい人がいるの?」
しかし、そう告げた時に震えたおじいちゃんの肩を見て、僕は自分の発言を瞬時に後悔した。
これは聞いてはいけない事だったと、何かが激しく告げている。
「…ごめんなさい。」
とんでもない事をしたという重たい感情に苛まされ、もはやそれしか言う事ができず、拳を握りしめて濃い色の床板を見つめる。
「…承太郎は、本当に優しい子だな。」
しかし、とても温かな温度を持った声音が上から聞こえたかと思うや、僕の体はそれと同じ温もりに包まれる。
おじいちゃんに抱きしめられているのだと。
そう気付くのに少しの時間を要した。
「お、おじいちゃん…!」
そのまま背中に回された手に優しく背中を叩かれると、我慢していたものが零れ出てしまう。
どうしよう、涙が止まらない。
何でなのかは解らないけど、僕は唐突に思った。
これはきっとおじいちゃんの涙だ。
だからこそ、僕には止められないのだ。
「確かに会いたい人はおるよ。でも『今』はな…」

「わしはお前達家族に何よりも会いたいし、側にいたい。」
そう告げてくれるおじいちゃんの言葉は、まるで僕の願いを聞き届けてくれたみたいだった。
「うん。僕もおじいちゃんにいっぱい会いたい。」
先ほどまで必死に隠していた願いが、引っ張り出される様に、スルリと飛び出す。
「そうか。」
そう言って笑ってくれるおじいちゃんの気配を感じ、その笑顔がいつまでも続く様にと、僕は閉じ込める様におじいちゃんの背中を抱きしめ返した。






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七夕によせて。
突貫SSなのでお恥ずかしい点が多々ですが…
家族的なおじいちゃんと孫の関係な二人も大好きです!
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