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花ジョセSS「冬に、空に。」

2013/02/03

「お~い、大丈夫か、花京院。」
荷物を抱え前を歩いていたジョセフが僅かに振り向き、後ろを歩く人物の両手に抱えた袋の多さを気にかけながら、その名前を呼ぶ。
「ええ、大丈夫ですよ。そんな事より、前見て歩かないと、そっちの方が危ないですよ、ジョースターさん。」
ずれかけた荷物を、よいしょっと軽く整えつつ、笑顔で花京院はそう返答する。
だが…
「というかわしの方が明らかに量が少ないと思うのは気のせいなんじゃろうか…」
というつぶやきが耳に入ってきた。






気のせいである筈はない。
両手に抱える袋がこぼれ落ちそうな僕。
同じく両手に抱えており、確かに大きな袋だが、軽そうな一袋を持つ彼。
誰がどう見ても、一目瞭然である。
しかし、これは自分で選択した事だ。
誰だって、頼れる所を見せたいだろう。
…慕っている人の前では。






「だって、今回は僕が勝手についてきたんですよ。これ位持って当然です。」
そんな男心を知ってか知らずか、なおも心配気に振り向いてくる彼に、前を向くよう、促しを込めて花京院は告げた。



冬に、空に。



イブを直前に控えたこの日。
久々に集まった仲間達と空条家でパーティーの準備をしていた。
が、足りないものや欲しいものが次々と発覚し、それに気付いたジョセフが、皆に告げず、ちょっとそこまでという軽いノリで買い出しのために玄関で靴を履いている所に、花京院は遭遇したのだ。
こんなチャンスを逃せる訳がない。
居間にいる承太郎に気付かれる前に、少し控えめな声量で、彼はすぐに付き添いの名乗りをあげた。






偶然とは言え、彼と二人きりになれる貴重なこの時間に。
ただただ花京院は高揚していた。
二人で相談しながら、買い物かごに入れる作業ですら、楽しくてならない。
その筈だったのに。
途中で起きたある出来事が心に重く圧し掛かり、その思いを段々と薄れさせていた。
少しジョセフが歩調を遅くした事で隣に並べたこの状況で。
花京院は本日何度目かの、小さなため息をこぼした。






ジョセフが壊れものの様に、大事そうに抱えるその包みの中に。
あまりの荷物の量の多さに、店前のベンチで休んでいる花京院に、ジョセフが一声かけて買いに行ったものが入っている。
だからその中身は見ていない。
しかし、それが何であるかはおおよそ見当がつく。
クリスマスプレゼントであると同時に…おそらく他の意味も持つもの。
そう。
それを受け取る事のできる相手はもちろん明白で。

大事にされてるよなぁ。

一瞬、自分も血縁者として生まれたかったなどと考えつつ、馬鹿な考えはすぐに振り払い、横を歩く彼に遅れまいと花京院は歩調を早めた。






「ふうっ」
喧騒から幾ばくか離れた公園で、本日ようやく迎えた2度目の休息をとる。
腰掛けた花壇の縁におもむろに手を置き、そのまま空を仰ぎ見れば、それは一面雲に覆われていた。
今日は一日中、手元と前を行く人物ばかり目で追いかけていたので、今更ながら空の状態を知ったのだ。
「あれ?」
花京院はふと、あることに気付いた。
「どうしたんじゃ?」
彼と同じように、隣に腰掛けて、荷物に目をやっていたジョセフから声がかかる。
「いえ…この寒さに、この空模様ってひょっとして…」
「あ!」
花京院が言い終わらないうちに、ジョセフが急に立ち上がった。
手のひら同士をゆっくりと合わせ、まるで何かを包み込むような仕草をする。
それが何を意味しているか、花京院にはすぐ解った。
一片の白がその中に舞い降りたのだ。
「雪だ…」
それはどちらが発した言葉だっただろう。
その一つ目を合図にしたかのように、後から後からそれらは降り注いでくる。
花京院も片方の手のひらを上に向け、その一群を掴み取った。
「クリスマスを控えて、これは大きなプレゼントですね。」
「ああ…」
その言葉の持つ響きと同等の穏やかさをもつ笑顔がジョセフから返ってきた。
手のひらで感じる冷たさとは、正反対の温度が心に広がっていく。
思わず笑みが、花京院の口元にも浮かぶ。
「それに…」
「ん?」
「僕にとってもプレゼントかも。」
「何でじゃ?」
嬉しさのあまり、花京院は思わず率直な気持ちを口走りそうになる。

『貴方と二人で、ロマンチックな気分に浸れますから』

こんなこと言った日には、今のせっかくの雰囲気もぶち壊しになることは自明の理。
花京院は、自分の自制心に感謝しつつ、「秘密です」と作り笑顔で返した。
その返答に、納得いかない視線を投げかけていたジョセフが、ふと何かを思い出したように、花壇に置きっぱなしの、彼が持っていたプレゼントの入った紙袋に向かった。
何事かと振り向くと、視界が赤でいっぱいになる。
思わず、顔をやや後ろに下げると、それが赤い、この時期独特の紙で包装された何物かであるのが解った。
「…え?どうしたんです、これ?」
「見て解るじゃろう?プレゼントだ。」
確かに、よく見ると包装には小さなリボンが付けられたいた。
意表をつかれ、やや混乱する思考を整理するために、もう一度、花京院はジョセフに視線を戻す。
真っ直ぐ、見つめてくる瞳を捉え、深呼吸を深くする。
そこで、ようやく花京院は今の状況を理解した。
いや、いささか自分の希望的観測も混じっているのかもしれないが。
「ひょっとして僕に?」
確認の言葉をかけてみた。
「今ここに、他に誰がおるというんじゃ。ほれ、早く受け取ってくれ。」
いつまで自分に持たせておくんだという、からかいを込めたその言葉に、慌てて包みを受け取る。
どこか緊張した面持ちで、それを開くと、中から表れたのは漆黒の皮製手袋だった。
その色の見事さから、かなり良い品だということが見て取れた。
ゆっくりその手触りを確認する。
滑らかな感触が手に伝わってきた。
どうしようもない程幸せな気持ちが堰を切ったように、こみ上げてくる。
そのまま花京院は俯いてしまった。
「本当は、明日のクリスマスイブに渡そうと思ってたんじゃが。雪が降ってきて冷え込んできたし、どうせならすぐ活用した方がいいからな。」
上から聞こえるは声はひたすらに優しかった。
「…どうしましょう。」
「ん?」
相手の小声に、首を傾げて覗き込む体勢を取った体が、力強い腕に抱き締められ、そのまま閉じ込められた。
「ちょ!花京院!?」
「困っちゃう位嬉しいんですけど、僕。」
耳元での呟きに、さすがにジョセフも赤面する。
「そ、それは贈った甲斐があるが!だからって……」
抵抗の言葉は途中のまま、急に温もりが離れるのを感じながら、今度は肩をつかまれ、正対することになった。
急展開に思わず目を見開いているジョセフの瞳には、内面の感情がありありと表れている笑顔が映っていて。
「…ありがとうございます。」
「…あ、ああ。」
その表情と、言葉に、目の前の人物は、そう返すだけで精一杯だった。






幸せそうに、手袋をはめる花京院から、ジョセフは思わず視線をそらしていた。
贈り物を渡す一連の流れでは、別になんともなかったのに。
……こいつがああいうことするから!
心の中で、ひっそり悪態をつく。
自分でも解らない、様々な感情が胸の中で渦巻いていた。
「さて!」
「え?」
突然、握られた手に、思わずジョセフは顔を上げる。
「雪もかなりの量になってきましたし、そろそろ帰らなきゃなりませんね。」
そのまま、ずんずんと歩き出した花京院を、ジョセフは必死に押し留めようとした。
「な、何で手を繋ぐ必要がある?!は、恥ずかしいじゃろ!」
「でもこうすると暖かいでしょ。せっかくのプレゼントですし、どうせなら二人共暖まった方がいいじゃないですか。」
抗議はあっさり却下された。
彼には珍しいその強引さの前に。
そして、少しずつ伝わってくるほのかな温もりの心地よさの前に。
それらに負けた自分に、心でため息をつきながら、ジョセフは数十メートル引き連れられた末、あらぬ方向を見ながらも、ようやく自分から手を握り返した。
「……かなわんな、本当に。」






今にも鼻歌が交じりそうな勢いで、さながらエスコートをする様に歩くその相手は、今日貰ったたくさんの”プレゼント”を、全てかみ締めていた。









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3部後全員生存設定。
完全に季節外れですが、このままだと眠っちゃいそうなので。
前回の承ジョセSSとテーマが同じ「手繋ぎ」だったりします。 
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